クライアントの見積もり資料をChatGPTに貼り付けそうになったヒヤリハットから、社内のAI利用ガイドラインをChatGPTに下書きさせてみたら「叩き台」は一瞬だったが「現場が守るルール」は自分で詰めるしかなかった話

業務効率化の実践記録

「気をつけます」だけでは絶対にまた起きると思った

Web制作会社で複数のクライアント案件を掛け持ちしていると、提案書や見積もり比較のための下調べで、PDFを丸ごとChatGPTに読み込ませて要約させる、という作業が日常的に発生する。先日、複数社の相見積もりを整理する目的で、クライアントからもらった見積もり比較用のExcelをそのままアップロードしようとした瞬間、シートの中にクライアント名・契約金額・担当者の個人名がそのまま並んでいることに気づいて手が止まった。

結果的に貼り付けはしなかったが、「あと数秒気づくのが遅かったら、そのままアップロードしていた」という事実には背筋が冷えた。社内で軽く共有したところ、似たような「貼り付ける寸前で止まった」経験を持つ同僚が他に2人いることが分かり、「各自が気をつける」という運用ではいずれ誰かが本当にやってしまうと感じた。そこで、口頭の注意喚起ではなく、AI利用ガイドラインという形で文書化することにした。

TOI

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「うちは大丈夫」と思っている会社ほど、こういうヒヤリハットの共有をしていないだけだと思う。

ChatGPTにAI利用ガイドラインの叩き台を作らせてみた

使った手順

  1. 社内のヒヤリハット事例を、固有名詞を外して「どんな作業中に」「何を貼り付けそうになったか」の2点だけ箇条書きにする
  2. ChatGPTに、その事例を踏まえた「入力してよい情報」「入力してはいけない情報」の区分表と、違反した場合ではなく未然に防ぐための行動ルールを作らせる
  3. 生成された叩き台を、実際の業務フロー(提案書作成・議事録要約・コード修正・SNS投稿文作成など)に当てはめて、現場で本当に守れる粒度になっているか一つずつ確認する
  4. 確認した内容を踏まえて社内向けに文言を調整し、Wordなどで清書して全員に共有する

ChatGPTへのプロンプトはこんな形にした。

あなたは中小のWeb制作会社の情報セキュリティ担当です。
以下のヒヤリハット事例をもとに、社内向けの
「生成AI利用ガイドライン」の叩き台を作ってください。

【ヒヤリハット事例】
・クライアントの見積もり比較資料(社名・金額・担当者名入り)を
  ChatGPTにアップロードしそうになった
・議事録の音声メモを要約させようとして、
  クライアントの取引先名が含まれていることに後で気づいた

【やってほしいこと】
1. 「入力してよい情報」「入力してはいけない情報」を
   具体例つきで区分する
2. 罰則ではなく、未然に防ぐための行動(貼り付け前のチェック等)を
   ルール化する
3. 社内で実際に使っているツール(ChatGPT、Claude等)ごとに
   注意点を分ける
4. 箇条書き中心で、A4 1〜2枚に収まる分量にする

「区分の型」と「一般的な注意点」は一瞬で出そろった

プロンプトを送って数十秒で、「入力してよい情報」「入力してはいけない情報」の区分表と、貼り付け前チェックリストの叩き台が出てきた。「顧客名・契約金額・個人を特定できる情報は入力しない」「要約や翻訳が目的でも、まず固有名詞を仮名や記号に置き換えてから貼り付ける」といった、一般的なガイドラインとして必要な骨格はほぼ網羅されていた。

さらに、ChatGPT側の設定でどこまで防げるかという技術的な補足まで一緒に提案してきた点は助かった。具体的には、設定内の「データコントロール」から「すべての人のためにモデルを改善する」というモデル学習用途への提供トグルをオフにできること、1回限りで履歴にもモデル学習にも使われない「一時的なチャット」機能があること、Team・Enterpriseなど法人向けプランでは既定で入力内容が学習に使われない契約になっていること、をそれぞれ区別して説明してくれた。この整理は自分で一から調べるとそれなりに時間がかかる部分だったので、叩き台として時短効果は大きかった。

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でも「現場が守る気になるルール」は自分で詰めるしかなかった

叩き台ができたところまでは良かったが、実際に社内の業務フローに当てはめてチェックしていくと、そのまま配れる完成度ではなかった。

ChatGPTが作る禁止事項は「一般論としては正しいが、この会社の実際の作業では発生しない場面」まで幅広くカバーしていて、結果としてルールが長くなりすぎていた。たとえば「採用面接の評価情報を入力しない」という項目も含まれていたが、自社では採用業務にAIを使う機会自体がほとんどなく、こうした「実態と合わない項目」が混ざっていると、読む側は「自分には関係ない注意点が多い文書」という印象を持ち、結局最後まで読まれなくなる。

もう一つ想定外だったのが、区分そのものは正しくても、「見積もり資料をどう扱うか」のような判断が分かれる場面への回答が用意されていなかったことだ。ここは状況によって対応が変わるため、社内で実際に確認しながらパターンとして詰めた。

  • クライアントの見積もり・契約金額が入った資料を要約させたい場合 → 社名・金額・担当者名を仮名(A社・○○万円台など)に置き換えてから入力する。置き換えが手間で省略したくなる資料ほど、そもそも入力しない方針にする
  • 会議の音声メモを要約させたい場合 → 文字起こし後、取引先名や個人名が含まれていないか一読してから入力する。生成AIの「一時的なチャット」機能を使い、履歴に残さない設定にする
  • 社内向けの文書(議事録・マニュアル等)を作らせたい場合 → 固有名詞の置き換えは不要。ただし社外秘の数値(粗利率・原価など)が含まれる場合はマスキングする
  • ソースコードを読み込ませたい場合 → APIキーや接続情報がハードコードされていないか事前に確認する。法人向けプラン(学習に使われない契約のもの)を優先して使う
TOI

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「正しいルール」を作ることより、「面倒でも守りたくなるルール」に削ることの方がずっと大変だった。

最終的には、ChatGPTが作った区分表と設定まわりの説明はほぼそのまま採用しつつ、項目数を自社の実際の業務フローに合わせて半分程度に絞り込み、業務パターン別の対応表を追加する形にした。ゼロから作るより作業時間は大幅に短縮できたが、「配って終わり」にできる完成度にするには、結局は自分たちの業務を棚卸しする作業が必要だった。

パターン別、AI利用ガイドライン作成でAIに任せていい部分・いけない部分

  • 入力してよい情報/いけない情報の一般的な区分 → 任せて良い。骨格として過不足なく出してくれる
  • ChatGPTの学習利用オフ設定や法人向けプランの違いといった技術的な補足 → 任せて良い。自分で調べるより網羅的で速い
  • 一般的な注意点を幅広くカバーした禁止事項リスト → 叩き台として使い、自社の実際の業務にない項目は削る。削らずに配ると読まれなくなる
  • 見積もり資料や音声メモなど、扱いが状況によって分かれる判断 → 自分たちで実務に当てはめてパターン化する。ChatGPTは一般論は出せるが、自社特有の業務フローまでは踏み込めない
  • 「守る気になる」ボリューム・文言への調整 → 自分でやる。正しさと読まれやすさは別の問題

実際にやってみて分かった、ChatGPT活用の得意・不得意

ChatGPTに任せて良かった部分

  • 入力してよい情報/いけない情報の区分表という「型」を、事例を渡すだけで数十秒で作ってくれること
  • ChatGPTの設定(データコントロール、一時的なチャット)や法人向けプランの違いなど、自分で調べると時間がかかる技術的な補足まで整理してくれること
  • 業務ツールごとに注意点を分けるという構成自体は指示すればきちんと守ってくれること

自分でやるしかなかった部分

  • 一般論としては正しいが自社の業務では発生しない項目を見極めて削ること
  • 見積もり資料の扱いのように、状況によって対応が分かれる判断をパターン化すること
  • 「正しい文書」ではなく「現場が最後まで読んで実際に守る文書」に仕上げる調整

まとめ

  • ヒヤリハットが起きたら「気をつける」で終わらせず、事例を踏まえてChatGPTにAI利用ガイドラインの叩き台を作らせると、区分表の骨格は数十秒で出てくる
  • ChatGPTの「データコントロール」設定や「一時的なチャット」機能、法人向けプランの違いなど、技術的な補足も一緒に整理してくれるので調べる手間が省ける
  • ただし一般論をそのまま配ると「自社と関係ない項目が多い文書」になり読まれなくなるため、自社の実際の業務フローに合わせて項目を絞り込む作業は自分でやるしかない
  • 見積もり資料・音声メモ・社内文書・ソースコードなど、扱いが分かれる場面はパターン別に対応を決めておくと、次に同じ迷いが起きたときに判断が速くなる
  • 次は、ガイドラインを配って終わりにせず、貼り付け前チェックを実際の業務フローに組み込めているか、半年後に見直したい

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