「プロンプト集さえ作れば、みんなAIを使いこなせる」と思っていた
Web制作会社でエンジニアをしている自分にとって、AIに何かをやらせるときに「どう指示を書くか」はほとんど無意識でできる作業だ。だから非エンジニアの同僚から「AI使いたいけど何を打ち込めばいいか分からない」と相談されたとき、真っ先に思いついたのは「プロンプト集を作って配ればいい」だった。
議事録要約用、メール文面の下書き用、提案書のたたき台用……業務でよく発生するパターンを洗い出して、コピペするだけで使えるプロンプトを20個ほどまとめたスプレッドシートを作り、営業・経理・総務のメンバーに共有した。
TOI
正直、この時点では「これで解決した」くらいの気持ちでいた。今思うと完全に自分本位な発想だった。
配って2週間後、使用状況を確認したら
スプレッドシートを共有してから2週間後、実際にどれくらい使われているか同僚たちに聞いて回った。結果は予想よりだいぶ厳しいものだった。
- 一度も開いていない人が半数近くいた
- 開いた人も「自分の業務にそのまま当てはまるプロンプトがなかった」と回答
- 数人は使ってみたものの、「コピペしたら微妙な返答が来たので、それ以上直し方が分からず諦めた」
つまり「配る」ところまではできても、「定着させる」ところで完全につまずいていた。プロンプト集自体の質が低かったわけではなく、そもそもの設計が間違っていたと気づいたのはこの後だ。
なぜ定着しなかったのか、3つの原因を切り分けた
同僚一人ひとりに具体的に話を聞いていくと、つまずき方は大きく3パターンに分かれた。
パターンA: 毎回微妙に業務内容が違い、テンプレそのままでは使えない
議事録要約用のプロンプトを渡しても、実際の議事録は毎回フォーマットも参加者も議題も違う。テンプレを「その場で自分の状況に合わせて書き換える」作業自体が、非エンジニアにとってはハードルだった。
パターンB: 変な返答が来たときの直し方を知らない
これが一番多かった原因。プロンプトを打ってAIの返答が期待と違ったときに、エンジニアなら反射的に「指示が曖昧だったから条件を追加しよう」と直せる。だが非エンジニアの同僚にとっては、そこが「AIが使えない」という結論に直結してしまっていた。
パターンC: どのプロンプトをいつ使えばいいか、選ぶこと自体が面倒
20個もプロンプトが並んだスプレッドシートを開いて、自分の業務に合うものを探す。この「検索して選ぶ」という手間が、忙しい業務の合間には地味に重かったようだ。
代わりにやったこと: 「プロンプト集」ではなく「業務ごとの土台」を作った
3つの原因に共通していたのは、「毎回ゼロからプロンプトを選んで書く」という前提そのものが非エンジニアには向いていないということだった。そこでプロンプト集を配るのをやめて、Claudeの「プロジェクト」機能を使い、業務ごとに専用の対話スペースをあらかじめ作ってみることにした。
具体的な手順は以下の通り。
- Claude.aiで同僚の業務単位ごとに「プロジェクト」を新規作成する(例:「議事録整理」「見積書たたき台」)
- プロジェクトの「カスタム指示」欄に、その業務でいつも守ってほしいルールをあらかじめ書き込んでおく。例えば議事録整理なら「決定事項・保留事項・次回までのタスクの3つに分けて箇条書きにする」「敬語は使わず社内共有用の簡潔な文体にする」といった具合
- 過去に良かった議事録の実例や、社内の書式サンプルをプロジェクトの「知識」欄にアップロードしておく
- 同僚には「このプロジェクトを開いて、議事録を貼り付けるだけでいい」とだけ伝える
つまり同僚がやることを「プロンプトを書く」から「プロジェクトを開いて資料を貼る」まで減らした。プロンプトを覚える必要も、選ぶ必要もなくなる設計にしたのがポイントだ。
TOI
作る側の手間はプロンプト集より増えた。でも「使う側の手間」を減らさない限り定着しないんだと、このとき初めて腑に落ちた。
変更後、1ヶ月でどう変わったか
プロジェクト形式に切り替えてから1ヶ月経った時点で、再度同僚に聞き取りをした。
- 議事録整理プロジェクトは、対象だった3人全員が週1回以上使い続けていた
- 「返答が微妙だったときどうするか」という質問自体がほとんど出なくなった。カスタム指示にルールを書き込んであるぶん、最初から狙った形式に近い返答が来るようになったため
- 逆に、プロジェクト化していない業務(都度内容が変わる単発の相談ごとなど)では、以前と同じくAIを使わないままの人が多かった
つまり「型が決まっている定型業務」ではプロジェクト化が有効だが、「毎回内容が変わる非定型業務」には別のアプローチが必要というのが、今回分かったことだ。後者については、都度こちらが相談を受けて一緒にプロンプトを組み立てる、という運用に落ち着いている。

まとめ: プロンプト集を配る前に、まず業務が「定型」か「非定型」かを分ける
- 非エンジニアの同僚にAIを広めたいなら、プロンプト集を配って終わりにしない
- 毎回フォーマットが決まっている定型業務は、ClaudeやChatGPTの「プロジェクト」機能でカスタム指示と参考資料をあらかじめ設定し、「開いて貼るだけ」にする
- 非定型業務は、都度一緒にプロンプトを組み立てるサポートが必要と割り切る
- 配ったあとは2週間〜1ヶ月後に必ず使用状況を確認し、使われていない場合は「配り方」ではなく「そもそもの設計」を疑う
まずは自分の職場で一番使用頻度の高い定型業務を1つ選び、その業務専用のプロジェクトを作るところから試してみてほしい。



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