クライアントのRFP、ChatGPTに読み込ませて工数見積もりの叩き台を作らせてみたら「洗い出し」は速かったが「見えないリスク」は自分で拾うしかなかった話

業務効率化の実践記録

RFPを読んでから見積もりを出すまでが、いつも一番しんどい

Web制作会社でディレクション寄りの仕事もしている身として、一番気が重いのが「RFP(提案依頼書)を受け取ってから、見積もりを出すまで」の工程だ。RFPには要件がびっしり書いてあるように見えて、実際に読み込むと「デザインの範囲は?」「CMSはどこまでカスタマイズする前提?」「既存システムとの連携はどの程度?」といった、工数に直結する前提条件がふわっとしたまま残っていることが多い。

見積もりを出す前に、RFPの文章から「工数がかかる項目」を漏れなく洗い出す作業自体が、実はかなりの時間を食っている。過去に一度、この洗い出しが甘くて、後から「あ、この機能も要件に入ってたんですね」と言われて見積もりを出し直した経験があり、それ以来この工程には人一倍時間をかけるようになっていた。ちょうど新しい案件のRFPが届いたタイミングで、ChatGPT(GPT-5.5)にRFPを読み込ませて工数見積もりの叩き台を作らせてみることにした。

TOI

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見積もりを出す前に、見積もりを出すための下準備で半日溶ける現象。

ChatGPTにRFPを読み込ませて工数見積もりの叩き台を作らせてみた

使った手順

  1. RFPのPDF・Word文書のテキストをコピーしてChatGPTに読み込ませる
  2. 「デザイン」「フロントエンド実装」「CMS・バックエンド実装」「外部連携」「テスト・QA」「ディレクション」のカテゴリに分けて、RFPの文中から工数がかかりそうな項目を洗い出させる
  3. 各項目について「RFPに明記されている条件」と「明記されておらず確認が必要な条件」を分けて出力させる
  4. 洗い出された「確認が必要な条件」を実際にクライアントへの質問リストとして整理し、先方に確認してから工数を確定させる

ChatGPTへのプロンプトはこんな形にした。

以下はクライアントから受け取ったRFP(提案依頼書)の本文です。
Web制作・システム開発の見積もり担当として、工数見積もりの叩き台を作るために
必要な情報を整理してください。

【出力してほしい形式】
1. カテゴリ別(デザイン/フロントエンド実装/CMS・バックエンド実装/外部連携/
   テスト・QA/ディレクション)に、RFP本文から読み取れる工数がかかりそうな項目を列挙
2. 各項目について、RFP本文に「明記されている条件」と「明記されておらず、
   クライアントへの確認が必要な条件」を分けて記載
3. 「明記されておらず確認が必要な条件」だけをまとめた、クライアントへの
   質問リストを最後に作成

【注意】
・工数の日数や金額は出さず、あくまで項目の洗い出しと確認事項の整理に集中する
・RFPに書かれていないことを勝手に補完せず、「書かれていない」という事実を
  そのまま出力する

【RFP本文】
(ここにRFPのテキストを貼り付け)

「洗い出し」の速さと網羅性は、確かに圧倒的だった

数十秒で、6カテゴリすべてに項目が埋まった一覧が出てきた。特に「明記されておらず確認が必要な条件」の列は、自分が読んだだけでは気づけなかった抜け漏れをいくつも拾っていた。例えば「会員登録機能」という一文だけがRFPにあった箇所について、ChatGPTは「SNS連携ログインの要否」「退会後のデータ保持期間」「メール認証の要否」など、実装工数に直結する未確定要素を並べて質問リスト化してくれた。自分だけで読んでいたら、「会員登録機能=お問い合わせフォームの延長」くらいの粒度でしか工数を見積もっていなかったと思う。

質問リストの作り方も参考になった。RFP本文の該当箇所を引用しながら「この記載だけでは○○の範囲が確定できません」という形で質問を組み立ててくれるので、クライアントに送ってもそのまま使える体裁の質問メールになっていた。

TOI

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「書かれていないことをそのまま書かれていないと言う」だけで、こんなに助かるとは思わなかった。

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それでも一件、見積もりが甘くて痛い目にあった

洗い出し自体はかなり網羅的だったのだが、実際にこの叩き台をベースに見積もりを組んだ案件で、一箇所だけ苦い思いをした。RFPに「既存の顧客管理システムとAPI連携する」とだけ一文で書かれていた項目について、ChatGPTは「連携方式(REST/CSV連携等)」「認証方式」「データ項目のマッピング」を確認事項として挙げてくれていたのだが、それを質問リストに入れて先方に確認したところ「既存システム側の仕様書はあるが、10年近く前に作られたもので、担当していたベンダーはすでに廃業している」という回答が返ってきた。

この時点で、ChatGPTが洗い出してくれた「確認すべき項目」自体は正しかったのだが、「確認した結果、詳細が分からない」というケースの工数リスクまではAIは織り込んでくれない。結局、仕様書が古く実際の挙動と食い違っている部分があり、連携部分の実装だけで当初見積もりの2倍近い工数がかかることになった。RFPの文章だけを読んでいるChatGPTには、「既存システムとの連携」という言葉の裏にある「仕様書が古い」「担当者が不在」といった、Web制作の現場でよくあるリスクの匂いまでは嗅ぎ取れない。

パターン別、RFP工数見積もりでAIに任せる前に確認すべきこと

今回の経験から、RFPの工数見積もりにChatGPTを使う際に気をつけるべきパターンが見えてきた。

  • 新規構築で、既存システムとの連携がない場合 → 洗い出しから質問リスト作成まで、ほぼChatGPTの叩き台をそのまま使ってよい
  • 「既存システムと連携」「既存データを移行」という一文がある場合 → 洗い出された確認事項を先方に聞くだけでなく、「その既存システムの仕様書はいつ作られたものか」「今も保守しているベンダーがいるか」まで踏み込んで確認する。ここが崩れていると工数は簡単に倍になる
  • RFPの記載が曖昧で分量が少ない場合 → ChatGPTの洗い出しは項目そのものが薄くなりがちなので、過去の類似案件の見積もり項目リストを別途持参して突き合わせる
  • 予算感が先方から提示されている場合 → 洗い出した項目を全部盛り込むと予算オーバーになりやすいため、「必須」「あれば良い」の優先度づけは自分で行う

実際にやってみて分かった、RFP見積もりでのChatGPT活用の得意・不得意

ChatGPTに任せて良かった部分

  • RFP本文から工数がかかる項目をカテゴリ別に漏れなく洗い出すこと
  • 「明記されている条件」と「明記されていない条件」を機械的に切り分けること
  • 確認が必要な項目を、そのまま送れる体裁の質問リストに整形すること

自分でやるしかなかった部分

  • 「既存システムとの連携」のような一文の裏にある、仕様書の古さや担当者不在といった現場特有のリスクを見抜くこと
  • 確認した結果「詳細が分からない」ケースの工数リスクを見積もりに織り込むこと
  • 洗い出された項目に優先度をつけ、予算感に収まる形に調整すること

まとめ

  • RFPの工数見積もりは、ChatGPTに「カテゴリ別の項目洗い出し」「明記/未明記の切り分け」「質問リスト化」をさせると、下準備の時間を大きく短縮できる
  • ただし、ChatGPTはRFPの文章に書かれた情報しか扱えないため、「既存システムとの連携」のような一文の裏にある現場特有のリスク(仕様書の古さ、担当者不在など)までは拾ってくれない
  • 特に「既存システムと連携」「既存データを移行」という記載がある案件は、確認事項を聞くだけでなく「その情報がどれだけ最新で、誰が把握しているか」まで踏み込んで確認する
  • 洗い出された項目の優先度づけと、予算感に収める調整は、結局自分でやるしかない
  • 次にRFPを受け取ったら、まずChatGPTに項目洗い出しと質問リスト作成を任せ、そのうえで「既存システム」「既存データ」といったキーワードが出てくる箇所だけは自分で深掘りする、という使い分けをしていきたい

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