海外の取引先への英文メール、ChatGPTとDeepLを両方使ってみたら「丁寧すぎ」と「馴れ馴れしすぎ」の両方で失敗した話

業務効率化の実践記録

海外の取引先への英文メール、ChatGPTとDeepLを両方使ってみたら「丁寧すぎ」と「馴れ馴れしすぎ」の両方で失敗した話

Web制作の仕事をしていると、海外拠点のフリーランスデザイナーや、海外企業の担当者とメールでやり取りする機会が年に何度かある。英語は読めても書くのは苦手、という非エンジニアの同僚も多く、「AI翻訳に全部任せてしまえば安心なのでは」という声をよく聞く。実際にDeepLとChatGPTを業務の英文メールで使い分けてみたところ、結論はそう単純ではなかった。うまくいったケースと、送った後に「これは失敗した」と気づいたケースの両方があったので、実際のやり取りを踏まえてまとめる。

結論を先に言うと、定型的な進捗報告はDeepLの精度で十分トーンの調整が必要な催促・交渉メールはChatGPTにトーンを指定して複数パターンを作らせるのが安全支払い条件など契約に関わる文言はAIに文面を作らせても人が最終チェックを外さない、という3段構えの使い分けに落ち着いた。

実際に試してみた

ケース1: 進捗報告などの定型連絡はDeepLでほぼ問題なかった

週次の進捗報告や、作業ファイルの受け渡しの連絡といった、内容が事実の報告だけで完結するメールは、DeepLの「フォーマル」設定で日本語から英訳するだけでほぼ問題なく使えた。「今週はデザインカンプの修正を完了しました。来週はコーディングに着手します」程度の内容であれば、ニュアンスで誤解が生じる余地が少ないため、機械翻訳の精度で十分実務に耐える。

ケース2: 支払いの催促メールで「回りくどすぎる」と気づいた

問題が出たのは、支払いが予定より遅れていた海外の協力デザイナーに対して、催促のメールを送ったときだった。日本語で「大変恐縮ですが、お手数をおかけしますが、ご確認いただけますと幸いです」という、日本のビジネスメールでは普通の言い回しをそのままDeepLのフォーマル設定で英訳すると、”I would be much obliged if you could kindly confirm the matter at your earliest convenience when it is not too inconvenient for you” のような、必要以上にへりくだった英文になった。

TOI

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丁寧さを狙って直訳したはずが、逆に「本当に困っているように見えない」回りくどい文になってしまった

これは日本語の「恐縮」「幸い」といったクッション言葉を、英語圏の実務メールの感覚に変換せずそのまま訳語に置き換えてしまったのが原因だった。英語のビジネスメールでは、丁寧さは言葉数の多さではなく、要件の明確さで示すことが多い。そこでChatGPTに「日本語の意図(支払いが遅れていることを確認したいが、相手を責める意図はない)」を先に説明し、「率直だが失礼にならない、業務上のプロフェッショナルなトーンで」と指定して英訳をやり直させた。すると “Just checking in on the invoice from last week — could you let me know the payment status when you get a chance?” のような、短く直接的で、かつ相手を追い詰めない文面が返ってきた。実際に送ってみると、返信も同じくらい率直な内容で、やり取りがスムーズに進んだ。

ケース3: 支払い条件をカジュアルに訳させたら期限があいまいになった

逆の失敗もあった。契約更新にあたって、支払い条件(検収後30日以内に支払う、という条件)を先方に伝える文面を作った際、「堅すぎない、フレンドリーな感じで」とChatGPTに指定したところ、”we’ll take care of the payment soon after everything’s confirmed” という、期限の数字が完全に抜けた曖昧な文になって返ってきた。読んだ瞬間は自然な英文に見えるが、「30日以内」という契約上重要な期限の情報が、トーン調整の過程でごっそり抜け落ちていたことに、送信前の見直しでようやく気づいた。

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日本語のメールをAIに直させ続けた経験でも似た現象があったが、英訳ではさらに厄介だ。日本語であれば数字が抜けていることに気づきやすいが、流暢な英文になっているほど、重要な情報が抜けていても違和感なく読めてしまい、見落としやすくなる。契約や金額に関わる文言は、AIに「自然さ」を優先させるのではなく、まず日本語の原文にある数字・条件をこちらでリスト化し、それらがすべて訳文に反映されているかを一つずつ照合する作業を必須にした。

TOI

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「自然な英語」であることと「必要な情報が全部入っている」ことは、AI翻訳では別々に確認しないといけないと痛感した

結論: 3パターンの使い分け

3つのケースを踏まえて、英文メールでのAI翻訳の使い分けを次のように整理した。

  • 事実報告のみの定型連絡(進捗報告、ファイル送付連絡など): DeepLのフォーマル設定にそのまま任せて問題ない。誤解の余地が少なく、修正の手間もほぼかからない。
  • トーンが重要な催促・交渉メール: 日本語の言い回しをそのまま訳させず、まず「伝えたい意図」をAIに説明し、トーンを明示的に指定して複数パターンを出させる。DeepLの直訳では日本語特有のクッション言葉が回りくどい英文になりやすい。
  • 支払い条件・期限など契約に関わる文言: 「カジュアルに」「柔らかく」といったトーン指定は、数字や条件が抜け落ちるリスクがあるため避ける。原文の数字・条件を先にリスト化し、訳文と一つずつ照合してから送る。

実際に使っているプロンプトの型

トーン調整が必要なメールでは、次の順番でChatGPT(またはClaude)に指示すると再現しやすい。

  1. 日本語の原文と、「この文で伝えたい意図(何を求めているか、相手を責めていないかなど)」を分けて伝える
  2. 「率直だが失礼にならない、社外向けの業務メールのトーンで」など、具体的なトーンを指定する
  3. 出てきた英文を、原文にあった数字・固有名詞・期限がすべて残っているか一つずつ照合する
  4. 気になる場合は「もう少しカジュアルに」「もう少し明確に期限を強調して」と追加で指示し、2〜3パターンを比較してから選ぶ

まとめ: 英文メールでAI翻訳を使うときに押さえること

  • 事実だけを伝える定型連絡はDeepLのフォーマル設定で十分
  • トーンが重要なメールは、日本語の言い回しを直訳させず、意図を説明してからトーンを指定する
  • 支払い条件など数字が関わる文言は、カジュアルなトーン指定を避け、原文の数字・条件を訳文と必ず照合する
  • 流暢な英文ほど情報の欠落に気づきにくいため、送信前の照合作業は省略しない

AI翻訳は「英語が書けない」という壁そのものはほぼ解決してくれる。しかし「どのトーンで、何を漏らさず伝えるか」は、結局こちらが指示し、確認する部分が残る。この線引きを持っておけば、英語が得意でない担当者でも、海外の取引先とのメールで事故を減らせるはずだ。

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