「提案資料、AIで一発で作れるらしい」を営業担当と一緒に試してみた
Web制作会社で働いていると、見積書や提案書の「文章」をAIに手伝わせる話はもう珍しくない。だが最近、営業担当から「Gammaってツールを使えば、スライドの見た目まで一発で作れるらしい。今度の提案、それで作ってみたい」と相談された。文章ではなく、クライアントにそのまま見せる”スライド”をAIに任せられるのかは、まだ試したことがなかった。今回は、実際にあった架空の想定案件(新規のコーポレートサイトリニューアル提案)をネタに、AIスライド生成ツールで提案資料一式を作れるか、営業担当と一緒に検証した。
結論から言うと、構成案(どんな順番で何を話すか)と、各スライドの叩き台の文章は、人がゼロから考えるよりかなり速く形になった。一方で、費用や工数などクライアントに提示する具体的な数字は、こちらが渡していない金額を「それらしく」埋めてくることがあり、確認せずに使うと事故につながると分かった。さらにデザイン面でも、自社のロゴやブランドカラーを反映させる調整は結局人の手が必要だった。この記事では、実際にやってみた手順と、どこまで任せてよいかの線引きをまとめる。
実際にやってみた
手順1: 提案の要件だけをAIに渡し、構成案を作らせる
まず、クライアント名や実際の金額など具体的な情報は一切入れず、「中小企業のコーポレートサイトリニューアル提案」という条件と、課題(更新しづらい、スマホで見づらい、問い合わせが増えない)、提案の方向性(CMS導入、レスポンシブ対応、問い合わせ導線の見直し)だけをテキストで箇条書きにして、AIスライド生成ツール(Gamma)に渡した。「10枚程度の提案資料の構成案を作って」と指示すると、課題整理→提案内容→スケジュール→費用感→まとめ、という流れで構成案とスライドごとの見出し・要点が数十秒で返ってきた。
TOI
構成の「型」を考える時間がまるごと浮いた感じがして、これは営業担当が喜ぶのも分かる
手順2: 各スライドの本文(叩き台)を生成させる
構成案をベースに、各スライドの本文もそのまま生成させてみた。「課題整理」のスライドでは、こちらが渡した課題をわかりやすく3つに整理し直してくれ、「提案内容」のスライドでは、CMS導入のメリットを箇条書きで補足してくれるなど、叩き台としての文章の質は、営業担当がこれまで一から書いていたものと同等以上だった。誤字や不自然な日本語もほぼなく、この段階では非常に良いと感じた。
手順3: 費用感・スケジュールのスライドで危ない挙動が出た
問題は「費用感」と「スケジュール」のスライドだった。こちらが具体的な金額や工数を一切渡していないにもかかわらず、AIが「一般的な相場」として、それらしい金額とスケジュールをスライドに書き込んできたのだ。渡していない数字を、あたかも自社の見積もりであるかのように埋めてしまう挙動は、そのまま気づかずクライアントに見せていたら誤った金額を提示する事故になっていた。スケジュールについても同様に、実際の稼働状況を踏まえていない、根拠のない納期が書き込まれていた。

以前、見積書・提案書の「文章」をAIに任せる検証をしたときも、AIが根拠のない条件を勝手に補ってしまう傾向があった。今回のスライド生成でも同じ癖が、より視覚的に説得力のある形で再現された格好だ。
手順4: デザイン面を自社ブランドに合わせて調整する
構成と文章がある程度固まった段階で、実際に自社のロゴとブランドカラーを反映させようとしたが、ここは想像以上に手作業が必要だった。テンプレートの配色を変える機能はあるものの、ロゴの配置バランスや、既存の提案書フォーマットで統一している見出しの装飾までは自動で揃わず、結局デザイン担当がスライドごとに手直しすることになった。AIが作った「見た目が整った初期状態」から、自社らしい提案資料に仕上げるまでの工程は、思ったより短縮されなかった。
TOI
「見た目がきれいなスライド」と「自社ブランドとして出せるスライド」の間には、まだ結構な距離があると感じた
結論: AIに任せていいこと・人にしかできないこと
検証を通して、AIスライド生成ツールに任せてよい工程と、人が必ず確認すべき工程がはっきり見えてきた。
AIに任せてよいこと: 構成案づくりと、文章の叩き台作成
課題整理や提案内容の説明など、事実関係が明確な部分の構成・文章は、AIに任せてスピードを大きく上げられた。ゼロから考える時間をなくし、営業担当は中身の磨き込みに集中できる。
人が必ず確認すべきこと: 費用・スケジュールの数字と、自社ブランドへの調整
具体的な金額や納期は、AIが「それらしい数字」を勝手に補ってしまうため、必ず自社の実際の見積もり・稼働状況と照合してから使う必要がある。デザイン面も、自社のブランドガイドラインに沿っているかを人の目で最終チェックする工程は省略できなかった。
非エンジニアの営業担当に実際に伝えた手順
この検証を踏まえて、提案資料を作る営業担当には次の手順を勧めた。
- クライアント固有の情報(社名・金額・納期)は入れず、課題と提案の方向性だけを渡して構成案を作らせる: 具体的な数字を最初から渡さないことで、AIが数字を捏造しても気づきやすくする
- 構成案と各スライドの文章はAIに任せ、事実関係に誤りがないかだけを確認する
- 費用感・スケジュールのスライドは、AIが書いた数字をいったんすべて削除し、自社の実際の見積もりに差し替える
- 自社のロゴ・ブランドカラー・見出しデザインへの統一は、最初から人の作業として工程に組み込んでおく
- クライアントに送る前に、AIが書いた文章の中に事実と異なる説明や誇張表現が残っていないか、最終確認を必ず行う
「AIでスライドまで一発で作れる」と聞くと、ゼロから完成品ができあがるイメージを持ちがちだが、実際にやってみると、うまくいくのは構成と文章の叩き台までだった。数字とブランドの部分は、結局人が最後まで責任を持つ必要がある。
まとめ: 提案資料の作成にAIスライド生成ツールを使うときに押さえること
- 課題整理や提案内容の構成・文章の叩き台は、AIスライド生成ツールに任せて大きく時短できる
- 具体的な金額やスケジュールは、AIが根拠のない数字を勝手に埋めてしまうことがあるため、必ず自社の実際の数字に差し替えて確認する
- 自社ブランドのロゴ・配色・見出しデザインへの統一は自動化されず、人の調整工程として残しておく
- クライアント固有の情報は最初からAIに渡さず、後から人が差し込む運用にすると事故を防ぎやすい
提案資料づくりの「構成を考える」「文章の叩き台を書く」という一番時間のかかる工程はAIでかなり短縮できるが、「数字」と「ブランド」という、間違えるとクライアントの信頼を損なう部分は、これまで通り人が最終確認する必要がある。この役割分担さえ押さえておけば、非エンジニアの営業担当でも提案資料づくりの負担を安全に減らせるはずだ。



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