悩み:写真素材の予算を削りたいが、著作権も怖い
納品するコーポレートサイトのトップページ用バナーで、クライアントから「イメージに合う写真素材が見つからないので、AIで作れないか」と相談されたことがある。ストックフォトサイトで探しても「それっぽいけど微妙にズレている」ものしか見つからず、かといってオリジナル撮影を手配する予算も期間もない、という状況だった。
ここで悩ましいのが著作権まわりだった。生成AIで作った画像を、他社の商用サイトにそのまま使って大丈夫なのか。学習データの出所が不透明なツールで作った画像を、クライアントに「著作権的に問題ありません」と言い切れるのか。この不安を解消しないまま見切り発車で使うのは、Web制作会社としてさすがに怖い。
結論を先に言うと、Adobe Fireflyであれば「学習データがAdobe Stock・ライセンス取得済み素材・パブリックドメインのみ」という設計と、生成物が著作権侵害で訴えられた場合の法的補償(IP Indemnification)があるため、著作権面での不安はかなり解消できた。ただしクライアントの頭の中にある「うちの会社らしいイメージ」にAIがぴったり合う確率は低く、結局何度も指示を出し直す修正ループが発生し、「速いはずが意外と時間がかかる」という逆転現象が起きた。
TOI
「著作権は安心して使える」と分かった瞬間はホッとしたんだけど、そのあと「もっとブルーを爽やかに」「人物の表情をもう少し柔らかく」の往復が始まって、結局写真素材を探すのと同じくらい時間を使った
なぜAdobe Fireflyを選んだか
画像生成AIにはMidjourneyやStable Diffusion系のツールもあるが、これらは学習データの出所が不透明なものが多く、生成物が既存の著作物と偶然似てしまった場合のリスクを説明しづらい。今回は「クライアントに納品する商用サイトの一部として使う」という前提があったため、学習データの出所を明示していて法的補償も用意されているAdobe Fireflyを選んだ。すでに契約しているAdobe Creative Cloudのプランに含まれていた点も、追加の稟議なしで試せる理由になった。
実際にやってみた
やった手順
- クライアントの既存サイト・パンフレットから、使われている配色(コーポレートカラー)とトーンのキーワードを洗い出す
- Adobe Fireflyの「テキストから画像生成」で、業種・シーン・配色・雰囲気を具体的に指定したプロンプトを入力(例:「〇〇色を基調とした、オフィスで打ち合わせをする人物、自然光、清潔感のある雰囲気」)
- 生成された4案の中から近いものを選び、「参照画像」機能に読み込ませて構図やスタイルを固定しながら再生成
- 気になる部分(人物の表情・手の位置・背景の余計な要素)をプロンプトの追記と部分編集機能で修正
- 最終案をWebサイトの解像度・比率にトリミングし、書き出し
AIが速かったこと
- コーポレートカラーや雰囲気の言葉を丁寧に指定すれば、最初の1案で「方向性としては悪くない」ものが出てくるスピード感は素材探しより明らかに速い
- 「同じ人物・同じ構図で、背景だけ変える」といったバリエーション違いの量産は、参照画像機能を使えばストックフォトでは不可能なレベルで自由に作れる
- 著作権表記やライセンス条件を毎回確認する手間がなく、「この画像は本当に商用で使っていいのか」を都度調べる作業自体がなくなった
AIに任せきれなかったこと
一方で、実際にクライアント向けの成果物として仕上げていく過程では、想定より人力が必要な場面が多かった。
- 人物の手や指、背景の細かい文字・ロゴらしきものが不自然に破綻するケースが一定の確率で発生し、生成し直すか部分編集で直す作業が毎回発生した
- 「もう少し当社らしく」「この雰囲気は違う」というクライアントのフィードバックは、AIへの指示に落とし込むのが難しく、抽象的な言葉を具体的なプロンプトに翻訳する作業に想定以上の時間がかかった
- コーポレートカラーを正確に指定しても、生成のたびに微妙に色味がぶれるため、最終的にはPhotoshopで色調補正して統一する一手間が必要だった
- 実在する自社オフィスや実際の社員・商品を写した「証拠としての写真」が必要な場面(採用ページの社員紹介など)には、そもそもAI生成画像は使えない
「著作権的に安全に使える」ことと「クライアントの要望通りに一発で仕上がる」ことは、まったく別の話だった。前者はAdobe Fireflyのおかげでクリアできたが、後者はストックフォト探しと同じくらい、あるいはそれ以上に人力の調整が必要だった。
TOI
指の本数がおかしい生成結果を見て「あ、これAIだ」って一瞬で分かるやつ、今回も普通に出てきた。何度も生成し直して、ようやく手がまともな1枚にたどり着いた
結局どこまで任せていいか:用途で分ける
やってみて分かったのは、バナー画像のAI生成は「何を表現したい画像か」によって向き不向きがはっきり分かれるということだった。
雰囲気・世界観を伝える背景画像やイメージカットの場合
実在の人物・場所を必要としない抽象的なビジュアルであれば、Adobe Fireflyでの生成にほぼ任せてよい。著作権面の安心感もあり、バリエーション違いを何パターンも試せるメリットが大きい。
コーポレートカラーなど色の再現性が重要な場合
生成のたびに色味がぶれるため、AIにはラフ案作りまでを任せ、最終的な色調補正は人間が担当する前提で工程を組んだほうが安全。
実在の人物・オフィス・商品を見せる必要がある場合
採用ページの社員紹介や実際の店舗・商品写真など、「本物であること」自体に意味がある画像には、そもそもAI生成を使うべきではない。ここを混同すると、あとで「この写真、本物ですか」と聞かれたときに困ることになる。

まとめ
- Adobe Fireflyは学習データの出所が明示されており、著作権侵害時の法的補償もあるため、クライアント向け商用サイトのバナー画像に使う際の「著作権の不安」はかなり解消できる
- ただし人物の手や細部の破綻、コーポレートカラーの色ぶれ、抽象的な要望をプロンプトに翻訳する手間があり、「速いはずが意外と時間がかかる」ことも多い
- 実在の人物・場所・商品を見せる必要がある画像にはそもそも使うべきではなく、「雰囲気を伝える画像」と「本物であることが重要な画像」を最初に切り分けておくと、無駄な往復を減らせる
- 次のアクションとしては、案件に着手する前に「AIで作ってよい画像」と「実写が必須な画像」をクライアントとすり合わせておき、AI生成分は色調補正の工程まで含めてスケジュールに組み込んでおくのが安全



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