悩み:「営業時間外も自動で答えてほしい」という、予算のない要望
先日、地方で店舗を構えるクライアントから「サイトに問い合わせチャットボットをつけたい」という相談を受けた。理由を聞くと、電話対応できない夜間や休業日に「営業時間は?」「料金は?」といった同じような質問が何件も来ていて、翌営業日にまとめて折り返す手間が地味に負担になっているとのことだった。
ただし予算感を聞くと、月額数千円〜1万円程度が限度。世の中のSaaS型AIチャットボットは月額1〜5万円クラスが多く、この案件の規模には見合わない。サイトはWordPressで構築済みだったので、「プラグインだけで、月額のAPI利用料以外に固定費をかけずに実現できないか」を検討することになった。
結論を先に言うと、WordPressプラグイン「AI Engine」を使えば、OpenAIのAPIキーを設定するだけで会話できるチャットボットは30分もかからず動かせた。ただし、サイトに書いていない情報(割引条件やキャンペーンの詳細など)を聞かれると、AIがそれっぽい回答を作ってしまう問題があり、「答えていい範囲」をこちらで丁寧に区切ってあげないと、そのまま公開するのは危険だった。
TOI
APIキーを入れて動いた瞬間は感動したんだけど、試しに聞いてない情報を質問したら、堂々と嘘の割引率を答え始めて青ざめた
なぜ「AI Engine」を試したか
プラグインでAIチャットボットを導入する方法自体はいくつかあるが、今回は「無料枠が広く、OpenAIのAPIキーをそのまま使える」「チャットボット以外に文章生成・画像生成の機能もついている」という理由で、WordPress公式ディレクトリでも人気の高い「AI Engine」を選んだ。クライアント自身の月額固定費を発生させず、実際に使った分だけAPI利用料が発生する仕組みも、今回の予算感には合っていた。
実際にやってみた
やった手順
- WordPress管理画面から「AI Engine」プラグインをインストール・有効化
- OpenAIのアカウントでAPIキーを発行し、プラグインの設定画面に登録
- 管理画面の「Discussions(チャット)」機能でチャットボットのウィジェットを作成し、表示位置・色・アイコンをサイトのデザインに合わせて調整
- 会社概要・営業時間・料金ページなど、サイト内の情報をテキストでまとめて「Embeddings(ナレッジベース)」機能に登録し、その範囲だけを根拠に回答するよう設定
- 実際によくある質問を10問ほど自分で入力し、回答内容と「知らないことをどう答えるか」を確認
AIが速かったこと
プラグインを入れてから、見た目も含めて「それらしく動くチャットボット」ができるまでが驚くほど早かった。
- インストールからチャットが動くまで、APIキーの取得時間を除けば実質15分程度
- 「営業時間は?」「定休日は?」のような、サイトに明記された基本情報への回答は、登録した内容の通りに正確に答える
- ウィジェットの色・位置・アイコン画像はノーコードの設定画面でその場で変更でき、サイトのデザインを崩さずに設置できた
- 日本語での受け答えも自然で、「お問い合わせありがとうございます」のような丁寧な言い回しも初期状態から破綻しない
「とりあえず動くチャットボットを設置する」だけなら、半日仕事になると思っていた作業が1時間もかからなかったのは、率直に想定より速かった。
AIに任せきれなかったこと
一方で、ナレッジベースに登録していない質問を意図的にぶつけてみると、はっきりした弱点が見えた。
- 「今月キャンペーンはやっていますか」のような、サイトに書いていない・変動する情報を聞かれると、それらしい文章で「実施中の場合がございます」といった曖昧かつ誤解を招く回答を作ってしまう
- 個人情報(名前・電話番号・注文番号など)を含む問い合わせをそのままチャットに打ち込む利用者が一定数いることが想定され、AIがその内容をどう扱うか・ログをどう保存するかの説明をプライバシーポリシーに追記する必要が出てきた
- 質問が増えるほどAPIの利用料が従量で積み上がるため、想定外に質問が殺到した場合のコスト上限をクライアントに事前説明していないと、月末の請求でトラブルになりかねない
- 「担当者に直接聞きたい」という利用者への逃げ道(人に取り次ぐ導線)を用意しないと、AIの回答に納得できないまま利用者が離脱してしまう
AIはナレッジベースに入れていない情報について「分かりません」と正直に言うより、それらしい答えをでっち上げる方向に流れやすい。これは事前に聞いていた話以上に強く出て、公開前に「分からないことは無理に答えず、問い合わせフォームに誘導する」という指示をプロンプトに明記して回避する必要があった。
TOI
「分からないことは分からないと言って」と指示に書いても、聞き方を変えるとまた自信満々に間違った回答をしてくることがあって、結局何度もテストする羽目になった
結局どこまで任せていいか:問い合わせの種類で分ける
やってみて分かったのは、AIチャットボットに答えさせていい質問と、人に取り次ぐべき質問を、公開前に切り分けておく必要があるということだった。
営業時間・所在地・基本料金など、サイトに明記された固定情報の場合
ナレッジベースに登録しておけば、AIチャットボットにほぼそのまま任せてよい。24時間いつでも即答できる価値が大きく、間違えるリスクも低い。
キャンペーン・割引・在庫状況など、変動する情報の場合
ナレッジベースを毎回更新し続けるのは現実的でないため、そもそも答えさせず「最新情報はお問い合わせフォームからご確認ください」と誘導する設計にしたほうが安全。
個人情報や具体的なトラブル対応が絡む問い合わせの場合
AIには答えさせず、早い段階で「担当者に直接連絡する」導線(フォームやメールアドレスの表示)を出す設計にする。ここを省くと、個人情報がAI側のログに残り続けるリスクや、利用者の不満につながる。

まとめ
- WordPressプラグイン「AI Engine」を使えば、OpenAIのAPIキーを設定するだけでチャットボット自体は30分程度で動かせ、営業時間や料金などサイトに明記した情報への回答は精度も速度も申し分ない
- ただしナレッジベースに登録していない質問には、それらしい誤情報を作ってしまうリスクがあり、「分からないことは無理に答えない」設定を丁寧にテストして詰める作業が想定以上に必要だった
- 個人情報を含む問い合わせや従量課金のコスト管理など、AIの回答精度以外の運用面の説明もクライアントに事前にしておく必要がある
- 次のアクションとしては、公開前に「AIに任せていい質問」と「人に取り次ぐべき質問」を分けたテスト項目リストを作り、少なくとも10〜20問は意地悪な質問も含めて実際に投げてみてから公開判断をするのが安全



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