ヒートマップ、見てはいるけど「で、どう直すの?」で毎回止まる
クライアントのコーポレートサイトやLPで、Microsoft Clarityのヒートマップを見る機会は多い。クリックの密集、スクロールの到達率、セッション録画——データ自体は無料でたっぷり見られる。
問題はそのあとだ。「ファーストビューでの離脱が多い」というデータは見えても、それを「じゃあ何を直せばいいか」まで翻訳するのに毎回時間がかかっていた。件数の多いクライアントを何社も抱えていると、1件1件のヒートマップをじっくり読み込む時間は正直取れない。
Clarityに生成AI「Copilot」を使った分析機能が追加されていると聞き、実際に担当しているクライアントサイトのデータで試してみた。
TOI
ヒートマップって「見て満足」で終わりがちなの、あるあるすぎる。
Microsoft ClarityのAI(Copilot)に分析させてみた
使った手順
- 対象サイト(お問い合わせフォームがあるLP)のClarityダッシュボードを開き、直近30日分のデータが十分たまっていることを確認
- ダッシュボード上部の「AIによる要約」ボタンをクリックし、Copilotに全体傾向のサマリーを出させる
- 出てきたサマリーに対して「離脱率が高いセクションはどこか、理由の仮説とあわせて教えて」と追加で質問
- スクロールヒートマップの画像を見ながら、Copilotが挙げた仮説と自分の目で見た印象を照合する
Copilotへの質問はこんな形にした。
このサイトのヒートマップとセッション録画のデータから、
以下を教えてください。
1. 直帰・離脱が発生しやすいセクションはどこか
2. クリックが集中している箇所と、そこがCTAボタンかどうか
3. スクロール到達率が急に落ちるポイント
【注意】
・断定できない場合は「傾向として」と明記する
・改善案があれば具体的なセクション名で提案する
「見るべき場所」の絞り込みは、正直かなり速かった
1ページあたり数分かかっていた「まずどこを見るか」の一次スクリーニングが、Copilotのサマリーを読むだけで数十秒に短縮された。ファーストビューの直下でスクロール到達率が40%近く落ちていること、価格表のセクションでクリックが特定の1箇所に集中していること(実際はリンクになっていない見出しテキスト)など、自分で1件ずつ見ていたら見落としていたかもしれない箇所も拾ってくれた。
セッション録画の要約も便利だった。「離脱直前によくある操作パターン」として、フォーム入力欄を開いてすぐ閉じるユーザーが多いことをCopilotが指摘してくれたのは、100件以上の録画を早送りで確認する手間を考えると素直にありがたい。
「なぜ離脱するか」の核心は、結局自分で仮説を立てるしかなかった
一方で、Copilotが出す「改善案」は、どのサイトにも当てはまりそうな一般論の域を出ないことが多かった。「フォーム入力欄を開いてすぐ閉じている」というデータに対して、Copilotの提案は「入力項目数を減らす」「入力の負担を下げるUIにする」といった、ヒートマップ分析ツールの解説記事によく書いてある内容そのままだった。
TOI
「入力項目を減らしましょう」、それはそう。でも今回減らせない項目だから困ってるんだけど…
実際にセッション録画を数本自分の目で見直したところ、離脱直前に多かったのは「入力欄を開いた直後にスマホのキーボードで画面が隠れ、送信ボタンが見えなくなって焦って閉じる」という、このサイト特有のレイアウト崩れだった。Copilotのサマリーは「入力欄を開いてすぐ閉じる」という行動は正確に拾っていたが、その原因が「入力項目の多さ」ではなく「モバイル特有の表示崩れ」であることまでは特定できていなかった。
原因を実際の録画とスマホの実機で確認してからCopilotに「送信ボタンがキーボードに隠れて見えなくなる問題」と具体的に伝え直すと、ようやく「viewport の高さ調整」「固定フッターにボタンを配置する」といった、この不具合に対応した提案が返ってきた。つまりCopilotは「何が起きているか」の要約は速いが、「なぜ起きているか」の特定は、実機やユーザー視点での検証を先にやらないと的外れな提案しか返してこないということだ。

以前、PageSpeed InsightsのAI提案通りにサイトを直したときも同じ構造だった。「数値上の改善点」を機械的に出すのは速いが、「クライアントの体感や実際のユーザー行動に効くかどうか」の判断は結局自分でやるしかなかった。今回のヒートマップ分析も、AIが拾った「行動データ」を鵜呑みにせず、実機やユーザー目線で裏取りする一手間が要る点は変わらなかった。
実際に使ってみて分かった、Clarity AIの得意・不得意
今回試して見えた、Copilotに任せていい部分と、自分でやるべき部分の境界線はこうだ。
Copilotに任せて良かった部分
- 大量のセッション録画・ヒートマップから「まず見るべき場所」を絞り込むこと
- 離脱や直帰が集中しているセクションを機械的に特定すること
- 「クリックされているが実はリンクになっていない要素」のような見落としがちな異常の指摘
自分でやるしかなかった部分
- なぜその行動が起きているかの根本原因の特定(実機・実際の録画での検証)
- サイト固有のレイアウトや仕様に起因する問題の切り分け
- 改善案を「このサイトで実行可能な具体策」まで落とし込むこと
いちばんの学びは、Copilotのサマリーは「次に何を調べるべきか」のショートカットとして使い、原因の断定や改善案の採用は必ず自分で実機検証してから判断するという順番にすべきだということ。逆にこの順番さえ守れば、複数クライアントのヒートマップを毎月チェックする一次スクリーニングの負担は確実に減らせる。
まとめ
- Microsoft ClarityのAI(Copilot)は「大量データから見るべき箇所を絞り込む」一次スクリーニングが速く、複数クライアントを抱える案件では特に効く
- 「なぜその行動が起きているか」の根本原因は、実機・実際のセッション録画を自分の目で確認しないと特定できない
- Copilotの改善提案は一般論になりやすいので、原因を具体的に伝え直すとより実用的な提案が返ってくる
- AIが拾った「行動データ」と、自分の実機検証を組み合わせて初めて、クライアントに出せる改善提案になる
- 次にヒートマップを見るときは、まずCopilotの要約で「見るべき場所」を絞り、原因の特定と改善案の具体化は自分で行う順番にする



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