Web制作会社で働いていると、納品して終わりではなく、毎月アクセス解析レポートを送る仕事がついてくる。GA4(Google Analytics 4)の管理画面を開いて、セッション数・エンゲージメント率・コンバージョン数を拾い、前月比を計算し、それをクライアントが読める言葉に直す。数字を並べるだけなら30分だが、「なぜ増減したのか」「来月どうすべきか」まで書こうとすると、毎回1時間以上かかっていた。
結論から言うと、GA4の指標をCSVで書き出してChatGPTに読ませ、レポートの下書きを作らせるやり方は、数字の整理と前月比計算、文章の骨組み作りをかなり速くしてくれた。ただし「このクライアントの業種ならではの事情」を踏まえた解釈や、報告書の最後に添える「刺さる一言」までは任せきれず、結局そこは自分で書き直していた。今日はその境界線と、実際に使ったプロンプトを書いておく。
何に困っていたか
GA4のレポート作成が地味にしんどいのは、単純作業とセンスが必要な作業が同じ書類の中に同居しているからだ。セッション数や直帰率を前月と比較して増減率を出す部分は完全に機械的な作業なのに、「なぜエンゲージメント率が下がったのか」「この数字はクライアントにとって良い知らせなのか悪い知らせなのか」を判断する部分は、業種の知識やそのクライアントの事業フェーズを知らないと書けない。
さらに厄介なのは、クライアントによって「読みたいレポート」が全然違うことだ。数字に強い担当者には前月比・前年同月比の表だけで十分だが、そうでない担当者には「つまり今月はどうだったのか」を一文でまとめてあげないと読んでもらえない。同じデータから、相手に合わせて違う文章を書く必要があった。
TOI
毎月同じ曜日に同じ作業をしているのに、なぜか毎回「今月はどう書こうか」で30分悩む。この時間、正直ムダだと思っていた。
試したこと:GA4のCSVをChatGPTに読ませて下書きさせる
GA4にはChatGPTの公式連携機能はまだ存在しない(2026年8月時点)。サードパーティ製の連携ツールもあるが、月額費用がかかるものが多く、今回は費用をかけずに、GA4の管理画面から「レポート」→「エンゲージメント」→「集客サマリー」などの必要な画面でCSVを直接エクスポートし、それをChatGPTのチャットにドラッグ&ドロップで読み込ませるだけのやり方を試した。
使ったプロンプト
以下はWeb制作会社が管理しているクライアントサイトの、GA4から書き出した
月次アクセスデータ(CSV)です。前月分・当月分の2つのファイルを添付しています。
このデータを読んで、次の形式でレポートの下書きを作成してください。
1. 主要指標の前月比(セッション数・エンゲージメント率・コンバージョン数を表形式で)
2. 数字だけから読み取れる変化点(増減が大きい項目を2〜3個、理由の仮説つきで)
3. 来月に向けて確認・検討すべき項目(あくまで仮説ベースであることを明記)
※このサイトの業種や施策の背景は分からない前提で、データから読み取れる
事実と仮説を分けて書いてください。
ポイントは最後の一文で、「業種や施策の背景は分からない前提で」と明示的に断ったことだ。最初はこの断りを入れずに使っていたが、そうするとChatGPTがまるで背景を知っているかのような口調で「〇〇施策の効果です」と断定的に書いてしまい、そのまま出しそうになったことがあった。事実と仮説を分けて書かせるようにしてから、レポートとして使える形になった。
実際の出力例
あるBtoBサービスサイトのデータでは、次のような下書きが返ってきた。
- セッション数:前月比+12%
- エンゲージメント率:前月比-3ポイント
- コンバージョン数:前月比+2件
- 変化点の仮説:「セッション数は増加したが、エンゲージメント率が下がっていることから、流入経路が変わり、これまでより関心度の低いユーザーが増えた可能性がある」
- 確認事項の提案:「増加した流入元を確認し、意図した施策による増加かどうかを確認することを推奨」
事実(数字)と仮説(理由)がきれいに切り分けられており、下書きとしての骨組みは十分だった。ただし、実際にはこの月は展示会に出展した直後で、名刺交換した見込み客がまとめてサイトを訪れていたことが流入増の理由だった。この背景はGA4の数字だけでは分からず、ChatGPTの仮説も外れていた。
やってみて分かった良かった点
- 前月比の表作りが一瞬で終わる:Excelで関数を組んで前月比を出していた作業が、CSVを渡すだけで表になって返ってくるようになり、この部分だけで20分近く短縮できた
- 「事実」と「仮説」を分けて書く型が身についた:数字の報告と、自分の解釈をごちゃ混ぜにして書いていた自分のクセに気づけたのは、レポートの質そのものが上がった副産物だった
- 文章の骨組みができているので、加筆がラク:ゼロから書くより、下書きに背景情報を書き足していく方が圧倒的に速い
TOI
正直、「事実」と「仮説」を分けて書くという型そのものが、レポート作成で一番大事なコツだったのかもしれない。
やってみて分かった限界点
一方で、次の2つは結局自分で書き直す羽目になった。
1. クライアントの事業背景を踏まえた解釈は出せない
展示会出展、広告出稿、季節要因など、数字の変化を本当に説明する事情はGA4のCSVには一切含まれていない。ChatGPTが出す「仮説」はあくまでデータの形から推測できる一般的な可能性であって、そのクライアントの実際の事業状況とは無関係だ。この部分は、担当者が普段からクライアントとやり取りしている中で得ている情報を使わないと埋まらない。
2. レポートの最後に添える「刺さる一言」が書けない
数字と事実の整理はできても、「今月一番お伝えしたいのはこの一点です」という要約文は、そのクライアントが今何を気にしているか(売上か、採用か、ブランディングか)を知らないと書けない。同じ数字でも、相手が何を気にしているかによって「良い知らせ」にも「注意すべき知らせ」にもなる。ここはテンプレート化できず、毎回自分で考えている。
パターン別にどう運用しているか
今は次のような分担で落ち着いている。
- 数字の整理・前月比表・文章の骨組み:ChatGPTにCSVを読ませて下書きを作らせる
- 変化点の仮説:ChatGPTの仮説をそのまま採用せず、「候補の一つ」として見た上で、自分が知っているそのクライアントの事情(展示会・広告・季節要因など)と照らし合わせて書き直す
- レポート冒頭の要約文(刺さる一言):必ず自分で最後に書く。ここだけは下書きに任せない

まとめ
- GA4の月次データをCSVでエクスポートしてChatGPTに読ませると、前月比の表作りと文章の骨組み作りがかなり速くなる
- コツは「事実(数字)」と「仮説(理由)」を明確に分けて書かせること。プロンプトで「背景は分からない前提で」と断ることで、断定的な思い込みを防げる
- クライアントの事業背景を踏まえた解釈と、レポート冒頭の「刺さる一言」は、担当者しか知らない情報が必要なため人間が書く
- 次のアクションとしては、数字の整理はChatGPTに任せて時間を作り、浮いた時間をクライアントの状況把握と要約文の質を上げることに使う、という分担が現実的



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