Web制作の仕事をしていて、納品の最後の最後に必ず発生する作業がある。「この後、投稿の更新の仕方が分からなくなったらどうすればいいですか?」というクライアントからの質問に応えるための、WordPress運用マニュアル作りだ。検収も終わって気が抜けているタイミングで、スクリーンショットを撮りながらゼロから手順書を作るのは正直つらい。
結論から言うと、ログイン方法や投稿の編集、画像のアップロードといった「基本操作」の手順化はChatGPTにかなり任せられた。ただし、「このクライアントの管理画面に入れたカスタムフィールドの使い方」や「よくある操作ミスとその直し方」といった、その案件特有のつまずきポイントは、こちらが具体的に伝えない限り一切出てこない。今日はその境界線と、実際に使ったプロンプトを書いておく。
何に困っていたか
WordPressの運用マニュアルは「どの案件でも似たような内容になる」ように見えて、実際には案件ごとにかなり違う。使っているテーマ、入れているプラグイン、カスタム投稿タイプやカスタムフィールドの有無で、伝えるべき手順がまったく変わってくる。
これまでは過去案件のマニュアルをコピーして文言を直す「使い回し」で対応していたが、前の案件で使っていたプラグインの説明がそのまま残ってしまい、今回の案件には存在しない機能の手順を載せそうになったことが何度かあった。かといって毎回ゼロから作る余裕もない。この板挟みを解消したかった。
TOI
「前のマニュアルをコピーして直せば早いか」と思った瞬間が、実は一番危ない。存在しない機能の説明が紛れ込む。
試したこと:サイトの構成情報を渡してChatGPTに手順書の下書きをさせる
今回は、サイトの構成情報(使用テーマ、主要プラグイン、カスタム投稿タイプ・カスタムフィールドの有無、更新担当者の想定スキルレベル)を先に伝えたうえで、運用マニュアルの下書きを作らせるやり方を試した。
使ったプロンプト
あなたはWeb制作会社のディレクターが、納品先のクライアント向けに
サイト運用マニュアルを作成するのを手伝うアシスタントです。
以下の条件で、WordPressサイトの運用マニュアルの構成案と本文を作成してください。
【サイトの構成】
- テーマ:カスタムテーマ(ブロックエディタ対応)
- 主要プラグイン:お問い合わせフォーム、SEO設定プラグイン
- カスタム投稿タイプ:「お知らせ」「導入事例」の2つ
- カスタムフィールド:導入事例に「業種」「導入効果」の入力欄あり
【更新担当者】
- 普段ExcelやWordは使うが、WordPressは初めて触る非エンジニアの担当者1名
【出力してほしい項目】
1. ログインから記事投稿までの基本操作(手順を番号付きで)
2. 「お知らせ」と「導入事例」、それぞれの投稿手順の違い
3. 画像アップロード時に気をつけるべき点
4. 初めてWordPressを触る人がやりがちなミスと、その対処法
5. ここまでの内容だけでは不十分な可能性がある箇所があれば、別枠で指摘してください
ポイントは、カスタム投稿タイプやカスタムフィールドの中身まで具体的に伝えたことと、最後に「不十分な可能性がある箇所」を別枠で聞いたことだ。これを入れずに「WordPressの使い方マニュアルを作って」とだけ頼んだ1回目は、一般的なWordPress解説がそのまま返ってきて、「導入事例」のようなこの案件固有の投稿タイプにはまったく触れられていなかった。
実際の出力例(抜粋)
構成を細かく伝えた2回目では、次のような下書きが返ってきた。
- 基本操作:「管理画面にログイン→左メニューの『投稿』→『新規追加』」という形で番号付きの手順
- 投稿タイプの違い:「お知らせ」は通常の投稿と同じ手順だが、「導入事例」は本文の下にある「業種」「導入効果」の入力欄も忘れずに埋める、という注意書き
- よくあるミス:「公開ボタンを押す前に『下書き保存』のまま放置してしまい、サイトに反映されないケースが多い」という指摘
- 別枠の指摘:「画像のファイルサイズが大きすぎる場合の表示崩れについては、実際の挙動を確認のうえ追記することを推奨します」という一文
「下書き保存のまま放置」というありがちなミスをこちらが指定しなくても拾ってきた点は素直に助かった。一方で「別枠の指摘」で出てきた画像サイズの話は、まさにこちらが実機で確認して初めて書ける内容で、ChatGPT側では判断がつかないと正直に線引きしてきた形だ。
やってみて分かった良かった点
- 基本操作の手順化が速い:ログイン、投稿、画像アップロードといった、どの案件にも共通する定型パートの文章化にかかる時間がかなり短縮できた
- 構成情報を細かく伝えると、案件固有の投稿タイプの説明まで書き分けてくれる:「導入事例」「業種」「導入効果」のように具体的な項目名を渡すと、その項目に触れた説明を返してくる
- 「不十分な箇所を別枠で指摘させる」プロンプトが効く:本文に混ぜずに要確認箇所だけリスト化させることで、公開前にどこを実機チェックすべきか一目で分かる
TOI
プラグイン名やカスタムフィールドの項目名を、面倒でも一つひとつ書き出して渡すようにしてから、マニュアルの「その案件っぽさ」が一気に上がった。
やってみて分かった限界点
一方で、次の2つは結局こちらの実機確認と現場感覚に残った。
1. 構成情報を伝え忘れると、その機能の手順がそのまま抜ける
ChatGPTは「聞かれたことには答える」が、「聞かれていないカスタム機能」を自発的に洗い出してはくれない。例えば予約フォームプラグインを入れているのにその情報を伝え忘れると、予約管理の手順がすっぽり抜けたまま、一見完成したマニュアルが返ってくる。抜けている項目があってもマニュアルとして不自然に見えないため、こちらが構成を把握しきれていないと見落としに気づけないのが一番怖いところだった。
2. 「このクライアント特有」のトラブル対応は現場のやり取りがないと書けない
「担当者が忙しくて更新を後回しにしがちだから、月1回リマインドを送る運用にしている」「社内の承認フローが独特で、公開前に必ず上長確認が入る」といった、そのクライアント特有の運用上の癖は、実際にやり取りした人間にしか分からない。この部分はマニュアルの巻末に自分たちで追記するようにしている。
パターン別にどう運用しているか
サイトの構成と担当者のスキルに応じて、次のように使い分けている。
- シンプルなコーポレートサイト(通常投稿のみ):ChatGPTの下書きをベースに、実機でのスクリーンショットを追加して納品することが多い
- カスタム投稿タイプ・カスタムフィールドがあるサイト:機能ごとに構成情報を細かく伝えたうえで下書きさせ、実機で操作しながら手順の抜け漏れを確認している
- 複数担当者が更新する大規模サイト:基本操作マニュアルとは別に、承認フローや役割分担といった「運用ルール」部分は自分たちでヒアリングして手書きし、ChatGPTには任せていない

まとめ
- WordPress運用マニュアルの下書きは、テーマ・プラグイン・カスタム投稿タイプといったサイトの構成情報を具体的に伝えるとChatGPTにかなり任せられる
- コツは「基本操作」「投稿タイプごとの違い」「よくあるミス」の項目を指定したうえで、「不十分な可能性がある箇所」を本文と別枠で聞くこと
- 構成情報を伝え忘れると、その機能の手順が「不自然に見えないまま」抜け落ちる危険があるため、案件の機能一覧を漏れなく伝えられているか人間側で確認する
- 「このクライアント特有」の運用ルールや承認フローは現場のやり取りでしか分からない領域。マニュアルの巻末に自分たちで追記する運用にしている
- 次のアクションとしては、案件開始時に使う「サイト構成チェックリスト」をテンプレート化しておき、納品時にそのままChatGPTへの入力に使い回せるようにする、という運用が現実的



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