保守契約の更新案内メール、毎年気まずかった「値上げ交渉」をChatGPTに下書きさせてみたら「言いにくい理由の言語化」は助かったが「関係性ごとの温度調整」までは任せきれなかった話

業務効率化の実践記録

Web制作会社で働いていると、毎年この時期になると憂鬱になるタスクがある。保守契約の更新案内メールだ。サーバー代や作業単価が上がっている以上、本当は毎年少しずつ保守費用も見直したい。でも「去年と同じ金額で」と思っているクライアントに値上げを切り出すのは、正直かなり気が重い。結果、値上げを先送りしたまま何年も同じ金額で保守を続けてしまっている案件がいくつもあった。

結論から言うと、「値上げの理由をどう言語化するか」という部分はChatGPTにかなり助けてもらえた。サーバー費用の上昇や対応範囲の拡大といった根拠を、角が立たない言い回しで文章にする作業はまさにAIの得意分野だ。ただし、「このクライアントにはどのくらいの温度感で伝えるべきか」「値上げ幅をどこまで強気に出せる関係か」という判断は、こちらが事前に関係性を言語化して伝えない限りChatGPTには一切分からない。今日は実際に使ったプロンプトと、値上げ交渉メールをAIに任せてみて見えた境界線を書いておく。

何に困っていたか

保守契約の更新時期は毎年決まって来るのに、値上げ交渉のメールだけは「今年もそのまま自動更新でいいか」で済ませてしまうことが多かった。理由は単純で、金額の話を切り出す文面を一から考えるのが面倒だったからだ。値上げの根拠を並べるだけだと事務的すぎて冷たい印象になるし、逆に低姿勢すぎると「本当に必要な値上げなのか」が伝わらない。

結果として、サーバー費用や対応工数が明らかに増えている案件でも、メール文面を考える手間を理由に値上げのタイミングを逃し続けていた。これはさすがに良くないと思い、まず「値上げ理由の言語化」だけでもChatGPTに手伝ってもらうことにした。

TOI

TOI

金額の話を切り出すこと自体より、「その文面を考える最初の一歩」が面倒で先延ばしにしていた気がする。書き始めさえすれば大したことないのに。

試したこと:値上げの根拠と関係性の情報を渡してChatGPTに下書きさせる

今回は、値上げの根拠(何が上がったか)と、そのクライアントとの関係性(付き合いの長さ、過去のやり取りの雰囲気)を先に伝えたうえで、更新案内メールの下書きを作らせるやり方を試した。

使ったプロンプト

あなたはWeb制作会社の担当者が、保守契約の更新案内メールを
書くのを手伝うアシスタントです。
以下の条件で、値上げを含む更新案内メールの下書きを作成してください。

【契約の状況】
- 保守契約歴:3年目、月額保守費用は契約時から据え置き
- 値上げ理由:サーバー費用の上昇、問い合わせ対応件数が契約時の想定より増加
- 値上げ幅:月額保守費用を10%引き上げたい
- 関係性:担当者とは友好的にやり取りしており、値上げの相談自体は初めて

【出力してほしいもの】
1. 値上げの根拠を、角が立たない言い回しで2〜3点にまとめてください
2. 「今回が初めての値上げ相談である」ことを踏まえたトーンで
   本文を作成してください
3. 一方的な通知ではなく、相談・確認のニュアンスで
   結んでください
4. 件名も1案添えてください

ポイントは「値上げ理由」だけでなく「関係性」「値上げ相談が初めてかどうか」まで具体的に伝えたことだ。これを入れずに「保守費用の値上げ案内メールを書いて」とだけ頼んだ1回目は、どの案件にも使い回せそうな汎用的な値上げ通知文が返ってきただけで、初めて値上げを相談する相手向けの気遣いはまったく感じられなかった。

実際の出力例(抜粋)

関係性の情報まで細かく伝えた2回目では、次のような下書きが返ってきた。

  • 件名案:「保守契約更新のご案内とご相談(〇〇様)」
  • 冒頭:「いつも大変お世話になっております。契約更新の時期となりましたので、今後の保守内容についてご相談させていただきたくご連絡いたしました」
  • 値上げ理由:「近年のサーバー運用コストの上昇に加え、日頃のお問い合わせ対応件数も当初の想定より増えており、現行の保守費用での対応継続が難しくなってまいりました」
  • 結び:「つきましては、次回更新分より月額保守費用を10%改定させていただきたく、ご検討のほどお願いできますでしょうか。ご不明点やご相談がございましたら、いつでもお申し付けください」

「一方的な通知ではなく相談のニュアンスで」と指定した部分は特に効果があり、「改定させていただきたく」「ご検討のほど」といった、返答の余地を残した言い回しになっていた。値上げ理由も「コストが上がったので」だけでなく「対応件数の増加」という、こちらの手間が増えている事実を添えてくれたのも助かった。

やってみて分かった良かった点

  • 値上げ理由を角の立たない言い回しに変換するのが速い:「サーバー費用が上がったので値上げします」という直球な言い方を、相手が受け取りやすいトーンに整えてくれる
  • 関係性の情報を細かく伝えると、初回相談ならではの気遣いまで反映される:「値上げ相談が初めてである」ことを伝えると、一方的な通知ではなく相談・確認のトーンで結んでくれる
  • 件名まで含めて複数パターン試せる:「もう少し柔らかく」「もう少しはっきり伝えたい」と条件を変えて出し直させることで、トーンの選択肢を短時間で比較できた
TOI

TOI

「相談のニュアンスで結んで」と一言添えるだけで、通知っぽさがかなり和らいだ。言い方ひとつでここまで印象が変わるのかと素直に驚いた。

やってみて分かった限界点

一方で、次の2つは結局こちらの判断と関係性の把握に頼るしかなかった。

1. 値上げ幅の「攻め具合」は、こちらが決めて伝えない限り判断できない

ChatGPTは伝えた値上げ幅(10%など)をそのまま文章化することはできても、「この案件なら15%まで打診しても大丈夫か」「今回は5%にとどめておくべきか」といった、こちらの経営判断そのものは代わりに考えてくれない。値上げ幅の数字を渡さずに「適切な値上げ幅を考えて」と頼んだところ、根拠のない一般的な相場感(5〜10%程度)を返してくるだけで、案件ごとの事情はまったく反映されなかった。値上げ幅の意思決定は自分たちで行い、決まった数字をChatGPTに渡す、という順序は変えられないと分かった。

2. 「この担当者はメールより電話の方が話が早い」といった対応チャネルの判断はできない

過去のやり取りで「この担当者はメールだと反応が遅いが、電話で一言添えるとすぐ話が進む」といった経験則は、実際にやり取りした人間にしか分からない。ChatGPTが作るのはあくまで文面であって、「この案件は先に電話でひと言伝えてからメールを送るべきか」という送り方の戦略までは判断できない。この部分は下書きができた後、自分たちで送るタイミングと手段を決めている。

パターン別にどう運用しているか

案件との関係性や値上げの緊急度に応じて、次のように使い分けている。

  • 長年の付き合いで関係性が良好な案件:ChatGPTの下書きをベースに、相談のニュアンスを残したまま値上げ幅の根拠だけ自社の実情に合わせて微調整して送る
  • 値上げ相談が初めての案件:プロンプトに「初めての相談であること」を明記させ、通知ではなく相談のトーンを強めに反映させたうえで、送信前に電話で一言触れてからメールを送る
  • 過去に値下げ交渉やクレームがあった案件:ChatGPTの下書きはあくまで叩き台とし、本文は自分たちで大幅に手を入れる。文面よりも先に対面や電話での相談を優先している
得意先向けGA4月次レポート、ChatGPTに下書きさせてみたら「数字の整理」は速かったが「クライアントに刺さる一言」までは書けなかった話
Web制作会社で働いていると、納品して終わりではなく、毎月アクセス解析レポートを送る仕事がついてくる。GA4(Google Analytics 4)の管理画面を開いて、セッション数・エンゲージメント率・コンバージョン数を拾い、前月比を計算し...

まとめ

  • 保守契約の値上げ交渉メールは、値上げ理由・値上げ幅・クライアントとの関係性を具体的に伝えるとChatGPTにかなり任せられる
  • コツは「一方的な通知ではなく相談のニュアンスで結んで」と明示的に指定すること。これだけで文面の印象が大きく変わる
  • 値上げ幅そのものの意思決定と、案件ごとの「攻め具合」の判断は代わりにやってくれない。数字は自分たちで決めてからChatGPTに渡す運用にしている
  • 「メールより電話が早い担当者」といった対応チャネルの判断は経験則が必要な領域。文面ができた後、送るタイミングと手段は自分たちで決めている
  • 次のアクションとしては、値上げ理由の根拠(サーバー費用の推移、対応件数の増加など)を案件ごとに普段からメモしておき、更新時期が来たらそのままChatGPTへの入力に使い回せるようにする、という運用が現実的

コメント

タイトルとURLをコピーしました