毎月月末になると、案件別の売上データをかき集めて、前月比・担当者別・クライアント別に集計し直し、グラフを貼ったExcelシートを経営会議用に用意する。数字を並べるだけなら1時間で終わるはずなのに、ピボットテーブルの設定を毎回忘れていて調べ直したり、グラフの体裁を整えたりで、気づけば半日溶けている。
うちはWeb制作会社で、経理専任がいないため、この月次集計は私(エンジニア兼なんでも屋)の担当になっている。2026年1月にAnthropicの「Claude in Excel」がProプラン(月20ドル)でも使えるようになったと聞き、ちょうど今月分の集計が溜まっていたので試してみた。
結論から言うと、ピボットテーブルやグラフの自動生成にかかる時間は劇的に短くなった。ただし、「なぜこの数字になったのか」という経営会議で必ず聞かれる質問への答えは、Claudeが勝手に用意してくれるわけではなかった。この記事では、実際に触ってみて分かった「任せていい作業」と「結局自分で埋める作業」の境界線を書く。
導入は5分で終わった
Claude in Excelは、Microsoft 365のアドインとしてインストールする。手順はシンプルだった。
- Microsoft AppSource(アドインストア)で「Claude for Excel」を検索してインストールする
- Excelを開き、ホームタブに追加されたClaudeのアイコンから起動する
- Anthropicアカウント(Proプラン以上)でログインする
ITに詳しくない同僚でも迷わず終わる作業量で、実際に経理を手伝っている非エンジニアの同僚にも横で見てもらったが、5分もかからなかった。
TOI
ChatGPTにコードを書かせてExcelに貼り付ける、というこれまでのやり方に慣れていたので、Excelの中に直接AIがいる感覚は最初ちょっと不思議だった
実際にやってみた:案件別売上シートを渡して集計を頼む
案件名・クライアント名・担当者・請求金額・入金月が並んだ、うちの会社で普段使っている月次の売上台帳(ダミーの数字に置き換えたもの)をシートに用意し、サイドパネルのチャットに指示を出した。
プロンプト例:「このシートの請求金額を担当者別・クライアント別に集計して、別シートにピボットテーブルを作ってください。あわせて前月比の推移が分かる棒グラフも作成してください」
数十秒待つと、新しいシートにピボットテーブルとグラフが生成された。既存のセルを上書きせず、新規シートに作業してくれる点は安心感があった。自分でやると地味に時間がかかる「担当者ごとの小計」「グラフの軸ラベル調整」もひとまとまりで片付いたのは、率直に速いと感じた。
使ってみて分かった3つのこと
1. 「集計・グラフ化」の作業時間は体感で3分の1になった
ピボットテーブルの作成、担当者別・クライアント別のクロス集計、グラフの生成まで含めて、これまで1時間近くかかっていた作業が20分弱で終わった。関数を都度ググる手間がなくなったのが大きい。「作業として決まっている集計処理」はほぼ丸ごと任せられるという手応えだった。
2. 「なぜ数字が動いたか」の仮説は、外れることが多かった
前月比で売上が落ちている担当者について「要因を教えて」と聞いてみたところ、Claudeはシート上の数字だけから「大型案件の受注が減ったことが要因と考えられます」といった、もっともらしいが的外れな仮説を返してきた。実際は、その担当者が長期案件の検収待ちで請求が翌月にずれ込んでいただけだった。シートの外にある事情(進行中の商談、検収待ちの案件など)はClaudeには見えていないので、要因分析はあくまで「たたき台」として扱い、現場の肌感で必ず裏取りする必要があった。
3. 取引先名や金額を扱う以上、プラン選びは慎重にすべきだと感じた
今回はダミーデータで試したが、実際の取引先名・請求金額を含む台帳をアップロードする以上、データの扱われ方は無視できない。個人のProプランと法人向けのTeam/Enterpriseプランではデータの学習利用に関するオプトアウト設定の扱いが異なるため、実データを扱う前に自社の契約プランがどちらか、社内のデータ取り扱いルールと照らして必ず確認しておくべきだと感じた。ここを確認せずに社外秘の売上データをそのまま流し込むのは避けたい。
TOI
「集計は任せて、意味づけは自分でやる」と役割を割り切ってから、かえって資料作成が早くなった
誰でも再現できる導入・活用手順
- Microsoft AppSourceで「Claude for Excel」アドインをインストールする(Proプラン以上のAnthropicアカウントが必要)
- 実データの前に、ダミーの数字で一度試して挙動を確認する
- 集計したい売上台帳シートを開き、サイドパネルで「◯◯別に集計してピボットテーブルとグラフを作って」と具体的に指示する
- 生成されたピボットテーブルの数値を、元データと突き合わせて必ず検算する
- 「なぜこの数字になったか」の要因は、Claudeの回答を仮説として受け取り、現場で把握している事情(進行中の商談・検収待ちなど)を自分で補って資料に反映する
- 実際の取引先データを扱う前に、契約プランのデータ利用ポリシーを確認し、必要なら法人プランへの切り替えを検討する

まとめ
- Claude in ExcelはMicrosoft 365アドインとして5分程度で導入でき、Proプラン(月20ドル)から使える
- ピボットテーブル作成・クロス集計・グラフ生成といった「作業として決まっている処理」は劇的に速くなる
- 「なぜ数字が動いたか」という要因分析は、シートに書かれていない現場の事情まではAIには見えないため、仮説として扱い自分で裏取りが必要
- 実際の取引先名・金額データを扱う前に、契約プランのデータ取り扱いポリシーを確認しておくべき
- 経営会議資料の「集計パート」を月20ドルの投資で圧縮できるなら、経理専任がいない中小企業ほど費用対効果は大きい
月末の集計作業に時間を取られている担当者は、まず今月分のダミーデータで一度試してみて、自社のデータでどこまで安心して任せられるかを見極めるところから始めるとよさそうだ。



コメント