中小のWeb制作会社にいると、人事専門の部署がないまま、ディレクターやエンジニアが持ち回りで中途採用の面接官をやらされることがある。私も今年に入って、ディレクター職の中途採用で面接官を任された。
困ったのは、面接の「質問」よりも先に、「何を聞いて、何を基準に評価すればいいのか」がそもそも定まっていなかったことだ。前任の面接官に聞いても「そのときの感覚で聞いている」としか返ってこず、社内に質問リストや評価シートといったものは存在しなかった。
そこで、ChatGPTに求人票の内容を読み込ませて、質問リストと評価シートを作らせてみることにした。3名の候補者の面接で実際に使ってみた結果、聞くべき質問を漏れなく準備する部分は一瞬で終わり、面接前の準備時間はほぼゼロになった。ただし、「評価のブレをなくす」というそもそもの目的については、評価シートを作っただけでは達成できず、運用の工夫が別途必要だった。この記事では、実際に面接官として使ってみて分かった「任せていい部分」と「結局人がすり合わせる部分」を書く。
準備は30分ほどで終わった
ChatGPTに質問リストと評価シートを作らせる手順は、次の4ステップだった。
- 求人票と、募集しているポジションに求めるスキル・経験のメモをChatGPTに読み込ませる
- 「一次面接の面接官として、確認すべき質問リストを10問作ってほしい。質問の意図(何を確認するための質問か)も添えて」と依頼する
- 出てきた質問リストをもとに、「この質問リストに対応する評価シートを、5段階評価の基準つきで作ってほしい」と依頼する
- 出力された質問リストと評価シートを、実際の面接時間(今回は45分)に収まる分量に絞り込む
求人票をそのまま貼り付けるだけで、「ポートフォリオの確認」「これまでの制作フローの確認」「クライアント対応経験の確認」など、こちらが聞き漏らしそうな項目まで含めて質問リストが出てきたのは正直助かった。
TOI
面接前夜に「何を聞こう」と質問を考えるところから始めなくてよくなっただけで、当日の心理的な負担がだいぶ軽くなった
実際にやってみた:3名の面接で質問リストと評価シートを使う
作った質問リストと評価シートを、ディレクター職の候補者3名の一次面接で実際に使ってみた。質問リストのおかげで、3名とも同じ項目を漏れなく確認できたのは想定通りの効果だった。前任の面接官が「そのときの感覚」で聞いていた頃は、候補者によって聞く項目にばらつきがあったので、これだけでも比較のしやすさは上がった。
一方で、評価シートを使い始めてすぐに気づいたのは、同じ面接に同席したもう1名の面接官と、自分の評価が食い違う項目があったことだ。「コミュニケーション力」という評価項目に対して、私は候補者の受け答えの速さを見て4点をつけたが、もう1名は候補者が質問の意図を確認してから答える慎重さを評価して4点をつけていた。同じ4点でも、見ている行動がまったく違っていた。
使ってみて分かった3つのこと
1. 質問の抜け漏れは、ほぼゼロにできた
求人票の内容を読み込ませるだけで、確認すべき項目を体系的に洗い出してくれるため、「聞き忘れた」という事態は3名の面接を通じて一度もなかった。特に、複数の面接官が持ち回りで担当する場合、質問リストが共通のフォーマットとして機能したことで、候補者ごとの比較がしやすくなった。
2. 評価項目の「言葉」は同じでも、面接官ごとに解釈がズレる
前述の通り、「コミュニケーション力」「主体性」といった抽象的な評価項目は、5段階の数値基準を用意しても、面接官によって「何を見てその点数をつけるか」がズレることが分かった。評価シートに数値基準を書いただけでは、面接官同士の解釈のズレまでは防げないと分かった。これはAIに項目を作らせる作らせないに関係なく起きる問題で、事前に面接官同士で「この項目は具体的にどういう発言・行動を指すか」をすり合わせる時間を別に取る必要があった。
3. 候補者の歯切れの悪い受け答えは、評価シートの点数だけでは残らない
候補者の一人が、前職を辞めた理由について聞かれた際に、言葉を選びながら歯切れの悪い答え方をした場面があった。評価シートの項目には当てはまらないニュアンスだったが、面接官として気になった点だったため、シートの余白に自由記述としてメモを残した。数値化しきれない微妙な違和感は、評価シートの点数欄とは別に、自由記述欄を必ず用意して残しておく必要があると実感した。
TOI
評価シートを作って満足していたら、面接官同士のすり合わせをサボっていたことに後から気づいた
誰でも再現できる導入手順
- 求人票と、募集ポジションに求めるスキル・経験のメモをChatGPTに読み込ませる
- 「一次面接の面接官として、質問の意図つきで質問リストを作ってほしい」と依頼する
- 質問リストに対応する評価シートを、5段階評価の基準つきで作らせる
- 面接時間に収まる分量まで、質問と評価項目を絞り込む
- 面接官が複数いる場合は、面接前に評価項目ごとの「何を見て点数をつけるか」を全員ですり合わせる時間を必ず設ける
- 評価シートには数値の点数欄とは別に自由記述欄を用意し、数値化しきれない違和感もその場でメモしておく

まとめ
- ChatGPTに求人票を読み込ませるだけで、面接の質問リストと評価シートの「たたき台」は一瞬で作れる
- 質問の抜け漏れをなくし、候補者間の比較をしやすくする効果は確実にあった
- 「コミュニケーション力」のような抽象的な評価項目は、数値基準を用意しても面接官ごとに解釈がズレるため、事前のすり合わせが別途必要
- 候補者の歯切れの悪い受け答えのような、数値化しきれない違和感は自由記述欄に残す運用にしないと消えてしまう
- 評価シートは「作って終わり」ではなく、面接官同士のすり合わせとセットで運用してはじめて評価のブレが減る
複数の面接官が持ち回りで採用面接を担当している会社は、まず質問リストと評価シートの土台をAIに作らせたうえで、評価項目の解釈をすり合わせる時間を面接前に確保するところから始めるとよさそうだ。



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